『みかん』






「おーいナミ!!みかんくれ、みかん!!!」
うたた寝から起きると相変わらずルフィがなにやら騒いでいる。
声は上のみかん畑から聞こえてくる。あくびをしながら見上げるとルフィがナミに
みかんをねだっていた。
「あんたさっきあんなにお昼ご飯食べたばっかじゃない!」
「もう腹へった!な〜いいだろ〜みかんくれよ〜」
「・・・ほっんとよく食べるわねぇ。いっこだけよ、いっこだけ。ちょうど熟れてき
たのが
あったはずだから」
「やっほーい!」
ルフィはナミからみかんを受け取ると腕を伸ばして奴の特等席・船首へ跳んだ。
「出世払いでツケとくから☆」
とナミが言ったのは聞こえたのかは知らない。

「ん?チョッパーも欲しいの?」
「う、うん・・・でもオレ金持ってねぇ・・・」
「いいわよ、チョッパーは特別。いつもみんなの怪我みてもらってるお礼ね」
「いいのか?!」
「はい、ナミさん特製デリシャスみかんよ。ありがたく食べなさい」
「おー!!ありがとうナミ!!」
俺のいる場所からは見えなかったが、どうやらチョッパーもいたらしい。
珍しく気前のいいナミからみかんをもらったチョッパーが下りてきた。
両手で大事そうにみかんを持って、いつもより3倍増しにキラキラさせた目はただ
そのみかんを嬉しそうに見つめている。
トテトテと俺の前を通り過ぎるとき、やっと初めて俺に気づいて顔を上げた。
「あ、ゾロ起きたのか?」
「・・・あぁ」
満面の笑みでチョッパーは俺の傍らに寄ってくると、ニカッと笑った。
「見ろ、これもらったぞ」
「おぉ。みかんだな」
「そうだ。ナミのみかんだ」
胡坐をかいて座っていると立っているチョッパーと目線がちょうどになる。
誇らしげにみかんを俺に見せるとまたにーっと笑って隣にちょこんと座った。
どうやらここで食べる気らしい。

まだ半分眠い俺はなんとはなしにボーッと隣のチョッパーを眺めていた。
チョッパーは顔を紅潮させやや興奮気味だ。おもしろいなコイツ。
「うまそーだな、ナミのみ・・・」
チョッパーはそのみかんの皮を剥こうと・・・
剥こうと・・・してるよな?
でもチョッパーの手はみかんの皮をうわすべりしていた。
蹄(ひづめ)ではどうにもみかんの皮は剥けないらしい。
「・・・み・・かん・・・む、むげね゛ぇ・・・」
さっきまでの笑顔はどこへやら、目を潤ませ涙とおまけに鼻水までたらして
俺を見上げてくる。
「あーわかった。むいてやるから。ほら貸してみろ」
「うっ、うっ・・・ゾロぉ・・・」
「・・・泣くな」
俺はチョッパーからみかんを受け取り、皮を剥いてついでに食べやすいように
房もひとつひとつ分けてやった。
「ほら、これで食えるか?」
「ありがとうゾロ!」
差し出したみかんから一房取り、チョッパーはぱくっと口に入れた。
するとみるみるまた笑顔になり、ふにゃんとした目で俺に言う。
「ゾロ〜うめ〜ぞ〜」
「そうか。よかったな」
「おぅ!おまへもふうは?」
そう言ってチョッパーは早くも3つめを口の中でもぐもぐさせている。
「食うかしゃべるかどっちかにしろ。それにこれはおまえがもらったんだろ。
 俺はいいからおまえが食え」
んぐっと飲み込んで、次の一房をつまんだチョッパーは立ち上がって俺の膝に乗って
きた。
「・・・おい、なんだよ」
「ゾロが剥いてくれたからな。お礼だ」
「あぁ?―――ッ」
チョッパーは俺が開けた口に手にしたみかんの一房をポイッと押し込んだ。反射的に
俺は咀嚼してみかんを味わう。
「どうだ?うまいだろ。な?」
「…あぁ、んまい」
口の中に甘酸っぱい香りが広がっていくのを感じながら答える。
するとチョッパーはにひひと笑って「やっぱうまいもんは一人占めしちゃもったいな
いよな」と言いながらそのままあぐらをかいた俺の足に座り込んだ。
人一倍寂しがりやのこいつは時々こんなふうに俺の足や肩や頭や腹に乗ってくる。
「ゾロも食えよなっ」
振り返り俺を見上げて、ニカニカとした笑顔でチョッパーが言うので、俺もふっと微
笑って答えた。
「あぁ、もらうよ」
足に温かい毛ざわりを感じながら、帽子に顔を埋めてみたりする。
やべ・・・また眠くなってきた・・・。

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